エッグベネディクトとは
エッグベネディクトという名のサンドウィッチがある。 「爽やかな朝」の代名詞と言ってもいいほど、優雅で華やかな暮らしを想わせるエッグベネディクト。その形は、とてもサンドウィッチとは思えない。実際、ほとんどの場合、手ではなくナイフとフォークを使って食べる。ちょっと特殊なサンドウィッチなのだ。
サンドウィッチとは常に、気分に高揚を与える食べ物であるべきだと私は思う。見た目こそ特殊だが、その点で、エッグベネディクトは実にサンドウィッチらしい。今回は、そんなエッグベネディクトを「夜食」に食ってやりたいと思いついてしまった…。
ルーツ
エッグベネディクトの発祥については諸説あるが、最も周知されている有力説は二つ。
一つは、一九〇〇年頃、ニューヨーク市のデルモニコス(レストラン)で、毎週土曜の朝に来る常連客、ル・グラン・ベネディクト夫人がある日、「何か新しい変わったメニューはないの?」と支配人に訊ねたことを切っ掛けに、生み出されたとされる説。
二つ目は、一八九四年にウォルドルフホテル(現ウォルドルフ・アストリア)に、二日酔いのレミュエル・ベネディクトが訪れた際、二日酔いを治すためにバタートースト、ポーチドエッグ、カリカリに焼いたベーコン、オランデーズソースを注文した。後にこの料理に感銘を受けた給仕長オスカー・チルキーが、トーストとベーコンを、イングリッシュマフィンとハムに替え、朝と昼のメニューに加えたことを始まりとする説。
いずれの説も否定しきれず肯定もしきれないまま、百年以上決着がつかずにいる。が、少なくともエッグベネディクトとは、一九〇〇年頃、ニューヨーク市の飲食店でベネディクトという名の客を切っ掛けに作られた、朝食メニューであるということは確かなようだ。
夜のエッグベネディクトを作ってみた
…そう、エッグベネディクトは朝の食べ物なのだ。故に現在でも、エッグベネディクトを扱う店の殆どは、朝と昼限定のメニューとしている。人間誰しも天邪鬼。禁じられていることほどやりたくなってしまうもの。朝限定のサンドウィッチがあろうものなら、これを夜中に食べることに価値が生まれる!
というわけで、夜版エッグベネディクトを作ってみた。なに、簡単なこと。ハムの代わりに、肉百パーセントの食べ応えのあるジューシーハンバーグを使い、ほうれん草としめじのバター醤油炒めを加えて、ベビーリーフを散りばめれば夜のエッグベネディクトの完成。是非、罪悪感を味わいたい夜に、試してみてほしい。
レシピ(2人分)
材料
・イングリッシュマフィン 2つ
・バター 適量
・ベビーリーフ 適量
[ハンバーグ]
・牛豚合挽肉 180g
・オリーブオイル 少々
・塩コショウ 少々
[しめじとほうれん草のソテー]
・しめじ 適量
・ほうれん草 適量
・バター 10g
・醤油 小さじ2
[ポーチドエッグ]
・全卵 2つ
・酢 大さじ2
[オランデーズソース]
・卵黄 2つ
・バター 50g
・レモン汁 少々
・塩 適量
・ホワイトペッパー 適量
作り方
[ハンバーグを作る]
1、牛豚合挽肉をボウルに入れ、塩コショウを振り、粘り気が強くなるまで捏ねる。
2、捏ねた肉を二等分し、円型に成形する。ハンバーグは焼くと小さくなるので、マフィンの直系よりやや大きいくらいの大きな円形にするとよい。
3、フライパンにオリーブオイルを少し敷いて温め、ハンバーグを焼く。
4、両面焼きあがったら、金網に移し余分な脂を切っておく。
[ポーチドエッグを作る]
1、鍋にお湯をたっぷり沸かし、沸騰したら火を止める。
2、熱湯に酢(白身を瞬時に固まらせる効果がある)を入れ、渦を作るようにかき混ぜる。
3、渦ができたら、その中心に全卵を落とし、2分半ほど待つ。
4、形が崩れないように取り出し、氷水で冷やしておく。
※ポーチドエッグは、必ず一つずつ作ること。
[オランデーズソースを作る]
1、ボウルにバターを入れレンジでよく溶かす。
2、別のボウル卵黄とレモン汁を入れ、お湯の入った鍋の蒸気で温めながらホイッパーで素早くかき混ぜる。色が白っぽくなり、とろみがついてきたら1のバターを何度かに分け、少しずつ加えて混ぜる。
3、最後に、塩とホワイトペッパーで味を調える。
[しめじとほうれん草のソテーを作る]
1、フライパンにバターを入れ温める。
2、しめじとほうれん草の茎部分を軽く炒め、醤油を加える。
3、ある程度費が通ったらほうれん草の葉の部分を加え、火を止め蓋をする。
4、ほうれん草の葉がしなってきたら完成。
[組み立てる]
1、イングリッシュマフィンを半分に切り、トーストする。
2、焼きあがったイングリッシュマフィンにバターを塗る。
3、土台となる方のイングリッシュマフィンに、ハンバーグ、ソテー、ポーチドエッグ、オランデーズソースの順にのせる。
4、ベビーリーフを適当に散らして、もう一方のイングリッシュマフィンを乗せれば完成。
それにしても、自分の名前が料理の名になり何百年も受け継がれるというのは、どんな気分がするものだろうか。尤も、そんなに長生きはできないけれど。然し、サンドウィッチ伯爵にしてもベネディクトさんにしても、きっと誇らしかっただろうな。